今日は情報のH24第23問について解説します。
ある中小製造企業は、顧客の要望に合わせて製品を設計・製造・販売している。今まで、受注量が少なかったことから、電話やファクシミリ等で顧客への対応をしていた。近年、海外を含めて顧客からの受注が増加している。このような状況から、受発注にかかわる処理、問い合わせやクレーム処理を含めて顧客とのコミュニケーション、社内の製造指示などをシステム化することを検討している。その検討
の中での聞き取り調査の結果、経営者や従業員は、このシステム開発の投資評価をはっきりさせておきたいと考えていることが分かった。
投資評価に関する記述として最も適切なものはどれか。
ア 本システムの構築には多様な案が考えられるが、それらを検討する場合に、システム開発のプロジェクト遂行に関するリスクと、システムによってもたらされるベネフィットとの軸の視点から、それらの案を評価するポートフォリオ分析が有用である。
イ 本システムへの投資をTCOで評価する場合、従業員の教育などにかかわる技術サポートコスト、セキュリティ管理などにかかわる管理コスト、コンピュータの利用にかかわるエンドユーザコストの3つの視点から行う。
ウ 本システムを評価する場合、顧客がどう評価するかが重要であり、このような視点から、顧客ならば提案されたシステムをいくらなら購入するかを算定してもらうリアルオプションプライシングと言われる手法を採用することが妥当である。
エ 本来、システム導入は合理化のためであり、従って、システム導入に際して従業員何人を減らすことができるかを算定できれば、本システムの投資価値は判断できる。
解説
システムの投資評価に関する問題です。
それでは早速、各選択肢を見ていきましょう。
選択肢アの「ポートフォリオ分析」は、「リスク(重要度)」を横軸に、「満足度」を縦軸に取り、プロジェクトをポートフォリオ上にマッピングして優先順位付けを判断する分析手法です。多様な選択肢の中でどれを選択するかを検討する場合に有効な手法になります。
よって、この選択肢は〇です。
選択肢イにある「TCO (total cost of ownership) 」は、コンピューターシステムの導入、維持・管理にかかる費用の総額をいいます。選択肢にある技術サポートコスト、管理コスト、エンドユーザーコストだけでなく、システム導入に係るハードウェア、ソフトウエアなどの初期費用も含まれます。
よって、この選択肢は×です。
選択肢ウにある「リアルオプション」とは、金融商品であるオプションの考え方を事業評価に応用した手法です。「ある一定の投資を行い、黒字化が見えたら継続、難しい場合は撤退」というように将来の選択肢も含めて事業を動的に評価する手法であり、顧客の評価額を算定するものではありません、
よって、この選択肢は×です。
選択肢エでは、人員削減のみをシステム投資の価値評価にしていますが、顧客満足度の向上や業務の効率化によるリードタイムの短縮なども投資価値に含まれます。
よって、この選択肢は×です。
以上から、正解は選択肢アとなります。