今日は、企業経営理論のR5第32問(設問2)について解説します。
次の文章を読んで、下記の設問に答えよ。
さまざまな新しいSNSの登場や、メタバースなどの新しい技術の登場により、①デジタル・マーケティングが急速に進展している。このようなトレンドを背景にして、②消費者同士のクチコミやインフルエンサーの影響力などに対しても、ますます注目が集まっている。
(設問2 )
文中の下線部②に関する記述として、最も適切なものはどれか。
ア カスタマー・ジャーニーにおけるタッチポイントとは、企業やマーケターと顧客との接点であり、SNSやレビューサイトなどに投稿された当該企業に関連するクチコミも、タッチポイントである。
イ 実際には企業が費用を負担している広告であるにもかかわらず、広告であることを隠して行われるステルス・マーケティングは、特にインフルエンサーを用いたマーケティングに多く見られる。2022年には消費者庁が、このようなステルス・マーケティングを不当廉売として規制する方向で準備を開始した。
ウ スマートフォンを用いて誰もが日常生活の中で気軽にSNSに写真や意見などを投稿できるようになった結果、それらを閲覧する消費者の製品やサービスへの平均的な関心の強さや知識レベルなどは低下する傾向が見られ、結果としてカスタマー・ジャーニーにおけるクチコミの重要性も低下している。
エ 製品やサービスの仕様や性能などに関する探索属性と呼ばれる情報が豊富であることは、SNSやクチコミサイトなどに投稿されるクチコミの最大の強みである。次
解説
クチコミやインフルエンサーマーケティングに関する問題です。
まずは、本問に登場する用語の意味を確認しておきましょう。
「カスタマー・ジャーニー」とは、
「顧客が実際に商品やサービスを購入、利用するまでの一連の体験のプロセスを旅(ジャーニー)に例えたもの」のことです。顧客が特定のブランドや商品・サービスを認知して、調べたり、他の商品との比較を行い、購入、リピートしていくプロセスを可視化することで、適切な場所・タイミングで顧客に対して適切な情報を伝えることができるようになります。
また、「ステルス・マーケティング」とは、
「第三者的な立場を偽装して、特定の企業や製品について、宣伝と気づかれないように商品を宣伝したり、商品に関するクチコミの発信・伝播を図る行為」のことです。
それでは選択肢をみていきましょう。
選択肢ア:その通りです。
タッチポイントとは顧客とブランドが接触する顧客接点のことです。店頭での接客や広告だけでなく、SNSやレビューサイトでのクチコミもタッチポイントになります。
よって、この選択肢は〇です。
選択肢イ:誤りです。
2022年12月に消費者庁で行われた「ステルスマーケティングに関する検討会」において、ステルスマーケティングを「規制の必要がある」とする報告書がまとめられました。これを受け、消費者庁は2023年3月28日付けで、ステルスマーケティングを景品表示法における「不当表示」として禁止行為に指定、2023年10月1日の施行に向けた運用基準を公表しました。「不当廉売」としての規制ではありません。
よって、この選択肢は×です。
選択肢ウ:誤りです。
スマートフォンを用いたSNSの閲覧によって、製品やサービスのさまざまな比較検討が容易に行えるようになりました。従って、消費者の製品やサービスへの平均的な関心の強さや知識レベルは、低下するのではなく上昇したと考えられます。消費者のSNSの閲覧時間が長くなるに従い、カスタマー・ジャーニーにおけるクチコミの重要性も上昇していると考えられます。
よって、この選択肢は×です。
選択肢エ:誤りです。
製品・サービスの品質を特徴づける概念として、「探索属性」、「経験属性」、「信頼属性」の3つの属性があります。
「探索属性」とは、「購入の前に品質を把握することが可能な属性」のことです。
「経験属性」とは、「購入以前に品質を把握することは不可能であるが、実際に体験することにより、その品質を把握することが可能な属性」のことです。
「信頼属性」とは、「実体験があってもその品質を把握することができない属性」のことです。
SNSやクチコミサイトにおける情報は他者の「経験属性」による情報になるため、「探索属性」には該当しません。
よって、この選択肢は×です。
以上から、正解は選択肢アとなります。
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