今日は企業経営理論R1第25問の労働保険・社会保険に関する問題について解説します。
事業主が公の目的のために賦課徴収される公租公課のうち、法律で「国税徴収の例により徴収する」と規定されている労働保険(労災保険・雇用保険)、社会保険(健康保険、厚生年金保険、介護保険とする)の保険料の納付に関する記述として、最も適切なものはどれか。なお、本問における社会保険料については健康保険の日雇特例被保険者に関するものを除くものとする。
ア 事業主は、労働保険の継続事業における一般保険料については、その概算保険料(増加概算保険料、追加徴収、延納を除く)を、保険年度ごとに概算保険料申告書に添えて、その保険年度の4月1日(保険年度の中途に保険関係が成立したものについては、当該保険関係が成立した日)から40日以内に納付しなければならない。
イ 社会保険の被保険者(健康保険の任意継続被保険者を除く)及び被保険者を使用する事業主は、それぞれ保険料額の2分の1を負担しなければならないが、事業主は使用する被保険者負担分を報酬から控除することができなかったとしても、使用する被保険者及び自己の負担する保険料を納付する義務を負う。
ウ 社会保険の被保険者の毎月の保険料は、当月末日までに納付しなければならない。ただし、健康保険の任意継続被保険者に関する保険料については、その月の10日(初めて納付すべき保険料については、保険者の指定日)までに納付しなければならない。
エ 労働保険事務の処理を労働保険事務組合に委託している中小事業主(当該保険年度において10月1日以降に保険関係が成立したものを除く)は、当該事業主が申請することにより、その継続事業の概算保険料を、4月1日からの四半期ごとに4回に分けて納付することができる。
解説
会社が納める強制保険は、大きく分けて2種類あります(※事業規模等の要件により任意加入となる場合もあります)。
1.労働保険
・労働者災害補償保険(労災保険)…事業主が全額負担
・雇用保険…事業主・従業員で折半して負担(以下、労使折半)
2.社会保険(いずれも、原則労使折半)
・健康保険
・介護保険(健康保険料に包含して納付)
・厚生年金
これを踏まえて選択肢を見ていきましょう。
選択肢アは、労働保険(労災保険、雇用保険)の概算保険料納付についての説明文です。継続事業の労働保険は、保険年度ごとに(=年1回)申告・納付することとなっております。そして、その申告・納付期間は6月1日から40日以内となっております。したがって、4月1日という記載が誤りとなります。
選択肢イは、社会保険料の納付についての説明文です。社会保険料の負担はいずれも労使折半となっていますが、事業主が被保険者(従業員)と自己(事業主)の負担する保険料を納付する義務を負います。一般的に、事業主は給与天引きの形で被保険者(従業員)負担分の保険料を徴収し、事業主負担分と合わせて保険者へ納付しています。
よって選択肢イが正解ですが、念のため他の選択肢も確認していきましょう。
選択肢ウは社会保険料の納期限の説明です。社会保険料は翌月末日が納期限と決まっています。例えば、1月分の保険料は2月末日が納期限です。したがって「当月末日」が誤りです。後半の任意継続被保険者の記述は正しいです。
選択肢エは、労働保険事務組合による特例納付の説明文です。労働保険事務組合とは、事業主に代わって労働保険事務を代行する者をいいます。この労働保険事務組合を使うと、本来年1回の保険料納付が年3回(4ヶ月毎)に分割・延納できるという仕組みがあります。1年分の保険料となると相当なキャッシュアウトになるため、労働保険事務組合を使い分割納付をすることにより、保険料のキャッシュアウトを平準化できるメリットがあります。以上から、「4回」が誤りとなります。
以上から、正解は選択肢イとなります。