今日は企業経営理論H30第33問のマーケティングに関する問題について解説します。
マーケティング概念に関する記述として、最も適切なものはどれか。
ア 近年では様々なソーシャルメディアが普及しており、とくに SNS を活用した顧客関係性の構築に基づくマーケティングのあり方は、ソーシャル・マーケティングと呼ばれている。
イ ソサイエタル・マーケティング・コンセプト(societal marketing concept)では、標的市場のニーズや欲求、利益を正しく判断し、消費者と社会の幸福を維持・向上させる方法をもって、顧客の要望に沿った満足を他社よりも効果的かつ効率的に提供することが営利企業の役割であるとしている。
ウ マーケティングは営利企業の市場創造においてだけでなく、美術館や病院、NPO などの非営利組織にも適用されているが、非営利組織のマーケティングにおいてはマーケティング・ミックスのうちの価格要素の持つ相対的重要性は低い。
エ マーケティング・ミックスの 4 つのPは買い手に影響を与えるために利用できるマーケティング・ツールを売り手側から見たものであるが、これらを買い手側から見ると 4 つのCとしてとらえることができる。4Ps の Place に対応するものは、Customer cost、つまり顧客コストである。
オ マーケティング・ミックスは企業が設定した標的市場においてそのマーケティング目標を実現するための一貫したツールとしてとらえられるが、そのうちの販売促進の修正は、他のマーケティング・ミックス要素の修正と比べて長期間を要するものである。
解説
選択肢アの「ソーシャル・マーケティング」とは、企業の利益追求中心のマーケティングに対して、社会との関わりを重視するマーケティングの考え方をいいます。非営利目的や、社会全体の利益(例:環境問題への対応)を重視したマーケティングが該当します。したがって、SNSを活用したマーケティングの説明としてソーシャル・マーケティングの言葉を用いるのは不適切です。
よって、この選択肢は誤りです。
選択肢イは「ソサイエタル・マーケティング」という言葉が登場します。ソサイエタル・マーケティングとは、社会的な観点を含んだマーケティングの概念であるソーシャル・マーケティングのうち、社会的利益を考慮したマーケティングのことをいいます。設問中の「消費者と社会の幸福を維持・向上させる方法」という言葉からも、定義に合致すると判断できます。
よって、この選択肢が正解です。
ただ、この選択肢はぱっと見だと判断が難しいかもしれませんので、もし判断に迷ったら、一旦判断を保留して他の選択肢を確認しても良いでしょう。
他の選択肢も確認しておきましょう。
選択肢ウは、非営利組織のマーケティングにおいては価格要素の重要度が低いと説明されています。しかし、利潤を追求しない非営利組織と言えども、その事業を継続するためには採算性に見合う価格設定が必要と言えます。例えば、病院は診療報酬を中心とした収入で事業を行っていますし、博物館も入場料収入によって運営を賄っている部分があります。したがって、価格の要素は非営利組織においても重要と考えられ、相対的に重要性が低いとは言い切れません。
よって、この選択肢は誤りです。
選択肢エは、「4つのC」と見慣れない言葉が出てきますが、4P(s)の意味合いを踏まえて判断しましょう。ここではPlaceを買い手からとらえた場合とありますが、Placeは流通(物流・立地等)を指します。したがって、顧客コストではないと考えられます。また、顧客コストという意味では、4PでみればPrice(価格)であると判断もできます。
よって、この選択肢は誤りです。
選択肢オにあるマーケティング・ミックスとは、4P(Product, Price, Place, Promotion)を組み合わせて実行することを言います。これらの中でもPromotionは広告、パブリシティ、人的販売等を指しますが、他の4P要素と比べ、修正期間は相対的に短いと考えられます。例えば、製品であれば開発・製造の時間を要しますし、流通においても販売場所や物流ルートの変更は機動的に行いにくいです。
よって、この選択肢は誤りです。
以上より、選択肢イが正解となります。