今日は企業経営理論H29第30問について解説します。
次の文章を読んで、下記の設問に答えよ。
マーケターがその活動の場として選択する市場は、①ターゲット・マーケット・セグメントあるいは対象市場、標的市場などと呼ばれる。どのような市場セグメントをターゲットとするかは、企業の戦略や資源・能力の多様性に関連している。また、②ターゲットとする市場セグメントの選択パターンは、マーケターが対象とする製品と市場、あるいはそのいずれかの選択に依存する。
(設問1)
文中の下線部①に関する記述として、最も適切なものはどれか。
ア A社は、面や胴、小手、剣道着、はかまといった剣道用品を総合的に企画・生産するメーカーである。同社は、幼児・小学生、中高生、大学生・一般といった年齢を変数とした市場セグメントのそれぞれに適した製品群を生産している。これは、選択的専門化によるターゲティングの代表例である。
イ 老舗の豆腐製造業者B社は4代にわたって、家族従業者だけで豆腐の生産に携わっている。豆腐の販売先は、大都市に立地する日本酒バー数店舗のみである。これは、製品専門化によるターゲティングの典型例である。
ウ タオルメーカーのC社は、同社のランドマーク商品である、手触りのよいハンドタオルシリーズのブランドによって、高級ホテルやレストラン、スポーツジム、贈答品専門店など幅広いターゲットに対する働きかけを行っている。これは市場専門化によるターゲティング・アプローチである。
エ ハンドメイドのスポーツ自転車を製造・小売するD社は、小さな製造小売事業所2店舗を通じて、ファッション性と堅牢度の高い製品を提供している。製品は洗練されたデザインを持つが、競技指向や機能性指向とは対照的な、ファッション性を求める市場セグメントがターゲットである。これは、集中によるターゲティングである。
(設問2)
文中の下線部②について、下表の空欄A〜Dに当てはまる語句の組み合わせとして、最も適切なものを下記の解答群から選べ。
[解答群]
ア
A:競争相手の顧客奪取
B:新製品で顧客深耕
C:顧客内シェアの向上
D:フルライン化による結合効果
イ
A:顧客層拡大
B:新製品で顧客深耕
C:顧客内シェアの向上
D:製品系列の縮小
ウ
A:顧客内シェアの向上
B:新製品で顧客深耕
C:既存製品の新用途開発
D:新製品で市場開拓
エ
A:新製品で顧客深耕
B:新・旧製品の相乗効果
C:顧客内シェアの向上
D:フルライン化による結合効果
解説
今回はターゲットマーケティングに関する問題です。
それでは早速各設問を見ていきましょう。
【設問1】
エーベルの標的市場選定法についての知識が問われています。
エーベルの評定市場選定法とは、標的市場と投入する製品の二つの軸で、市場と製品の組み合わせを分類したものです。
選択肢アの記述は、幼児・小学生、中高生、大学生・一般といった年齢を変数とした複数の市場に、単一の剣道用品という製品を展開しているため、製品専門型です。
よって、この選択肢は×です。
選択肢イの記述は、豆腐という単一の製品を大都市に立地する日本酒バーという単一の市場に提供しているため、単一セグメント集中型です。
よって、この選択肢は×です。
選択肢ウの記述は、高級ホテルやレストラン、スポーツジム、贈答品専門店など幅広い市場に手触りの良いハンドタオルという単一の製品を展開しているため、製品専門型です。
よって、この選択肢は×です。
選択肢エはその通りで、集中(単一セグメント集中)型です。
以上から、設問1の正解は選択肢エとなります。
【設問2】
ターゲットとする市場と製品別の戦略に関する問題です。
空欄A~Dについてそれぞれ考えていきましょう。
空欄Aは、既存製品を既存市場に投入する場合の戦略が問われています。
既存の製品を既存の市場に投入する場合、同じ市場の顧客からより多くの製品を買ってもらうようにしないといけないため、選択肢アの「競争相手の顧客奪取」もしくは、選択肢ウの「顧客内シェアの向上」が当てはまりそうです。
選択肢イの「顧客層拡大」は既存市場ではなく、新市場に該当し、選択肢エの「新製品で顧客深耕」は既存製品ではなく、新製品に該当するため×と考えられます。
空欄Bは、新製品を既存市場に投入する場合の戦略が問われています。
選択肢ア、ウともに「新製品で顧客深耕」が挙げられており、その通りと考えられます。
空欄Cは、既存製品を新市場に投入する場合の戦略が問われています。
選択肢アは「顧客内シェアの向上」とありますが、「顧客内シェアの向上」は既存顧客に対する戦略ですので、×と考えられます。
選択肢ウは「既存製品の新用途開発」はその通りと考えられます。
以上から正解は選択肢ウと絞ることができました。
念のため空欄Dも確認してみますが、「新製品で市場開拓」は問題なさそうです。
よって設問2の正解は選択肢ウとなります。
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