今日は、企業経営理論のH28 第11問 (1) について解説します。
次の文章を読んで、下記の設問に答えよ。
ものづくりに強みをもつといわれているわが国の製造業であるが、近年大きな変化が見られるようになってきた。
①エレクトロニクスメーカー各社の苦境が伝えられており、エレクトロニクスメーカー各社では、事業分野の再構築を図る動きが活発
である。
自動車産業では、国内市場が縮小するなか、グローバルな競争に対応すべく生産拠点の海外移転や現地での研究開発の展開など大きな変化が見られる。また、②自動車のモジュール生産が本格化してきており、系列による垂直統合型の生産に変化が起こっている。さらに、環境対応技術や自動運転技術の開発が進むにつれて、自動車産業のサプライヤーにも技術の変化への対応が求められるようになっている。
(設問1)
文中の下線部①に記述されているエレクトロニクスメーカーの苦境の原因は多様である。そのような原因と考えられるエレクトロニクス産業の状況に関する記述として、最も不適切なものはどれか。
ア エレクトロニクス産業では、あらゆる分野の製品を生産し販売するという総花的な自前主義の戦略を見直して、事業分野の選択と集中を図り、電子部品サプライヤーとの垂直的統合を強化したため、事業分野の幅が狭くなり、グローバルな競争力が低下してきている。
イ エレクトロニクス産業では、安価な電子部品をグローバルに調達して、それらを組み合わせた製品が多くなるにつれて、部品から製品までの一貫生産がコスト競争のうえから不利になっている。
ウ エレクトロニクス産業では、競争優位の構築を目指しながらも、互いに同質的な戦略を展開しながら、技術進歩や製品開発を促進してきたが、電子技術を一方向に収斂(しゅうれん)させる傾向が強まり、多機能を搭載した類似製品の競争に陥りがちになっている。
エ エレクトロニクス産業では、先発企業が自社技術を武器に市場シェアを獲得していても、後発企業が安価な部材をグローバルに調達し、技術的にほぼ同等な製品で価格訴求力を武器に先発企業のシェアを奪うことが多くなっている。
解説
海外展開に関する問題です。
それでは選択肢をみていきましょう。
選択肢ア:誤りです。エレクトロニクス産業の変遷について書かれています。変遷を把握している方は少ないと思いますが、判断材料として「自前主義の戦略を見直して、事業分野の選択と集中を図り、電子部品サプライヤーとの垂直的統合を強化」した場合、事業分野の幅は狭まる可能性はあるものの、グローバルな競争力が低下するとは言い切れません。
よって、この選択肢は×です。
但し、この時点では一旦保留にして他の選択肢も確認したほうがよさそうです。
選択肢イ:その通りです。モジュラー型アーキテクチャの考え方に近いといえます。モジュラー型とは、既に設計された既存の部品を組み合わせて、新しい最終製品を作る設計方法のことをいいます。モジュラー型アーキテクチャは、インターフェースが統一されていれば、シンプルなルールで調整コストが削減でき、多様な組み合わせが可能というメリットがありますが、システム全体としてムダが出やすく、システム統合化技術によりコモディティ化(製品が一般化し、機能や品質などで差別化ができなくなること)が起こりやすく、価格競争に陥りやすいというデメリットがあります。
よって、この選択肢は〇です。
選択肢ウ:その通りです。選択肢イでも説明の通り、エレクトロニクスの分野では、統合化技術によりコモディティ化(製品が一般化し、機能や品質などで差別化ができなくなること)が起こり、結果的に類似製品の競争に陥ったといえます。
よって、この選択肢は〇です。
選択肢エ:その通りです。企業は先発優位により、早い時期に市場に参入することで得られる優位性を獲得できることがありますが、本問のように後発企業が安価な部材をグローバルに調達し、技術的にほぼ同等な製品を作ることが出来れば後発企業でもシェアを奪うことが出来ます。
最も不適切なものを選ぶ問題ですので、以上から、正解は選択肢アとなります。
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