今日は企業経営理論H24第19問について解説します。
H24 企業経営理論 第19問
次のケースを読み、この工場で組織変革がうまくいかなかった理由または採るべきであった手法に関する記述として、最も適切なものを下記の解答群から選べ。
「ある耐久消費財メーカーの経営者は、需要の変動に対応するために、それまでバッチ生産システムを採っていたアセンブリー工場に、新たにセル生産システムを導入しようと考えた。経営者ならびに工場長は、この工場の日常業務に影響を与えないよう配慮し、コンサルタントを秘密裏に導入して従業員の行動を分析させるとともに、工場とは離れた本社で変革案を作成した。
最終的に変革案がまとまった段階で、従業員全員を一堂に集め、会社のおかれた状況を説明し、明日からセル生産システムに移行すること、その移行の手続きについてほぼ一日かけて説明した。従業員は疲れていたようだが、ただ黙っていただけで特に反論もなかった。
その後、新しい職務訓練を経て、セル生産システムへの移行を実施したが、生産性は著しく低下してしまった。」
[解答群]
ア 工場と離れた本社で変革案を作成するのではなく、セル生産への移行プロセスに工場の実態を反映させるために、工場内で従業員が帰ってから作成すべきだった。
イ 従業員に対する説明の時間が長過ぎて、疲れてしまったため理解が得られなかったので、説明時間をもっと簡潔にすべきだった。
ウ セル生産システムへの移行について説明した際に、従業員から反論がなかったのは良く理解できなかったからであり、従業員一人一人を対象に説明をすべきであった。
エ 変革案の作成ならびに執行計画について、従業員たちを参加させ、フェアプロセスを経ていると実感させるべきであった。
解説
今回は、組織改革に関連した短いケースを読んで考える問題です。
この手の問題は比較的時間がかかる場合が多いですので、時間が足りなくなりそうな場合は一旦パスし、すぐに解ける問題を一通り解き終わってから時間があれば解くという対応をしても良いかと思います。
ケースを読むと、
・コンサルタントを秘密裏に導入して
・最終的に変革案がまとまった段階で説明
と書かれており、従業員が変革の必要性を十分認識しない状態で改革を実行してしまっていることがわかります。
そのため、組織変革がうまくいかなかった理由としては、従業員が変革の必要性を十分認識していなかったからであり、採るべきであった手法は、従業員に変革の必要性を十分認識させた上で、変革を実行するべきであったと考えられます。
では、それを踏まえて各選択肢を見ていきましょう。
選択肢アは、変革案を作成するプロセスは変わらず、場所が単に本社から工場に代わっただけではあまり意味がないと考えられます。よってこの選択肢は×と判断できます。
選択肢イやウも、既に変革案ができ上った段階で、説明方法を変えているだけですので、あまり効果的とは言えません。
選択肢エは、その通りで、変革のプロセスに従業員を参加させることで、従業員が変革の必要性を認識し、納得感を得ることができます。
以上から正解は選択肢エとなります。
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