今日は経済学H28第17問の外部不経済に関する問題について解説します。
いま、完全競争下にある合理的な企業の生産活動を考える。当該企業が生産活動で考慮する私的限界費用 MCPは下図のように描くことができるものとし、価格がk であるものとして生産量を決定している。
ただし、当該企業の生産ではいわゆる「負の外部性」が生じている。負の外部性を考慮した社会的限界費用 MCSは、私的限界費用に社会的負担を加えたものとして下図のように描くことができる。当該企業は、外部性を考慮することなく、価格 kと私的限界費用が一致する生産量を選択するが、社会的に最適な生産量は価格kと社会的限界費用が一致する生産量であるため、社会的には過剰生産による厚生損失(デッドウエイトロス)が生じてしまう。
このとき、下図に関する記述として、最も適切なものの組み合わせを下記の解答群から選べ。
a 外部性を考慮しない当該企業の私的な生産費用の大きさは、△oikで示される面積に相当する。
b 外部性を考慮しない当該企業の私的な生産者余剰の大きさは、△ojkで示される面積に相当する。
c 外部性によって生じるデッドウエイトロスは、△ohjで示される面積に相当する。
d 外部性によって生じるデッドウエイトロスは、△hijで示される面積に相当する。
〔解答群〕
ア aとc
イ aとd
ウ bとc
エ bとd
解説
解説の便宜上、以下の通り補助線・記号を追加し点i, jに対応する生産量をそれぞれl, mとします。
記述aの場合、外部性を考慮しない限界費用といえますから、三角形の一辺はMCPの線上に一致している必要があります。このとき、価格kの時に決まる生産量はmですから、△ojmが限界費用です。なお、△oikは負の外部性を考慮した場合の社会的総余剰です。
よって、この記述は誤りです。
記述bの場合、外部性を考慮しないので価格kでは点jより生産量mが決まります。よって、□omjkから限界費用△ojmを引いた△ojkが生産者余剰となります。
よって、この記述は正しいです。
記述cはデッドウエイトロスの説明です。社会的に最適なのは生産量lの時ですが、企業は生産量mで生産活動を行います。したがって、社会的には(m-l)の数量が過剰生産となります。(m-l)の数量は負の外部性によって生じる過剰生産量となります。この時、価格kを上回る限界費用分が社会的な損失となるため△hijデッドウエイトロスとなります。
よって、この記述は誤りです。
記述dは記述cの解説より、正しい説明です。
以上より、選択肢エ(bとd)が正解となります。