今日は経営法務R1第2問、会社法の事業譲渡に関する問題について解説します。
会社法が定める株式会社の事業譲渡に関する記述として、最も適切なものはどれか。なお、反対株主の買取請求権に関する会社法第 469 条第 1 項第 1 号及び第 2 号については考慮しないものとする。
ア 事業譲渡の対価は、金銭でなければならず、譲受会社の株式を用いることはできない。
イ 事業譲渡をする会社の株主が、事業譲渡に反対する場合、その反対株主には株式買取請求権が認められている。
ウ 事業の全部を譲渡する場合には、譲渡会社の株主総会の特別決議によって承認を受ける必要があるが、事業の一部を譲渡する場合には、譲渡会社の株主総会の特別決議による承認が必要となることはない。
エ 当該事業を構成する債務や契約上の地位を譲受人に移転する場合、個別にその債権者や契約相手方の同意を得る必要はない。
解説
事業譲渡とは、「譲渡人」が有する事業を「譲受人」に移転することをいいます。簡単に言うと、事業の売買契約です。
会社法上の組織再編には該当しませんが、組織再編の手法の一つとして用いられます。
この場合、譲渡会社は同一&近隣市町村で原則20年競業禁止(最長30年まで)義務を負います。
これを踏まえて各設問を見ていきましょう。
選択肢アは、事業譲渡を行う際の対価に関する説明です。事業譲渡は売買契約なので、譲渡会社へ対価を支払う必要がありますが、現金に限りません。テキストでは「お金」等と書かれており、ここは迷いやすいと思いますが、他の選択肢と比較して正誤判断しましょう。
選択肢イは、記述の通りです。
選択肢ウは株主総会特別決議の必要有無です。設問の場合、事業の全部を譲渡する場合は「譲渡会社と譲受会社それぞれの」株主総会の特別決議が必要です。また、事業の一部を譲渡する場合は、譲渡会社の株主総会の特別決議が「必要」です。
なお「重要でない一部の譲渡」の場合は株主総会の特別決議は不要です。
選択肢エについては、債務や契約上の地位を譲渡人から譲受人へ移転することになりますから、債権者や契約相手方の同意を得る必要があります。
以上より、選択肢イが正解となります。