今日は企業経営理論のR3第31問について解説します。
S社は国内外から仕入れたさまざまなスポーツ・シューズを、 9 つの自社の実店舗および数年前に開設した自社オンライン店舗において販売している。S社の今後の流通政策に関する記述として、最も適切なものはどれか。
ア S社が店舗を最初の 1 つから現在の状態まで増やしてきた過程においては、顧客接点が物理的に増加した。今後同社がオムニチャネル化を進めるためには、顧客管理方法を変更することが必要であるが、現在の顧客接点をさらに増やすことは必ずしも必要ではない。
イ S社では、 9 つの実店舗で多くの顧客が商品を見たり試着したりした後にオンライン店舗で購入すると、オンライン店舗に売り上げが偏り、 9 つある実店舗の従業員のモチベーションが低下するリスクがある。このため、S社は顧客が実店舗からオンライン店舗へ流れることを防いだ方がよい。
ウ 近年は同一の消費者であっても、実店舗を利用する場合とオンライン店舗を利用する場合とでは、利用動機や購入頻度、単価などが大きく異なることが顧客データから分かってきた。このため、実店舗における顧客データとオンライン店舗のそれとは切り離して活用することが望ましい。
エ 顧客対応のための組織体制や従業員の評価システム、在庫データの管理などの観点からは、各顧客には検討から購入までを一貫して同一店舗内で行ってもらうことが望ましい。S社がオムニチャネル化の推進の可否を今後検討していく上では、こうした点を十分に考慮する必要がある。
オ 消費者便益の観点からは、店舗外でもパソコンやスマートフォンなどからいつでも購入できるオンライン店舗に明らかにメリットがある。このため今後S社はオンライン販売を重視し、オンライン店舗に経営資源を集中することが望ましい。
解説
チャネル戦略より、デジタルマーケティングに関する問題です。
選択肢に登場する「オムニチャネル」とは店舗やインターネット、SNSなど複数のチャネルが互いに連携して消費者の利便性を向上させることを目的としたチャネル戦略のことです。
例えば、店舗に行ったけれど在庫がなかった場合に店舗からEC サイトに発注し、商品を受け取れるようにするといった仕組みです。
それでは選択肢をみていきましょう。
選択肢ア:その通りです。この場合、顧客との接点を増やさずともオムニチャネル化への対応は可能です。
よって、この選択肢は〇です。
選択肢イ:「顧客が実店舗からオンライン店舗へ流れることを防いだ方がよい」という点が誤りです。オムニチャネルの目的は消費者の利便性向上ですので、オンライン店舗の活性化はポジティブに捉えるべきです。
よって、この選択肢は×です。
選択肢ウ:必ずしも「実店舗における顧客データとオンライン店舗のそれとは切り離して活用することが望ましい」とは言い切れません。目的によっては、それぞれのデータを一括で活用したほうが良い場合もあります。
よって、この選択肢は×です。
選択肢エ:「各顧客には検討から購入までを一貫して同一店舗内で行ってもらうことが望ましい」という点が誤りです。選択肢イ同様、オムニチャネルの目的は消費者の利便性向上ですので、オムニチャネルを導入する場合には、企業側がこのような顧客の購買行動に合わせて仕組みづくりを進める必要があります。
よって、この選択肢は×です。
選択肢オ:「オンライン店舗に明らかにメリットがある」「オンライン店舗に経営資源を集中することが望ましい」という点が誤りです。実際の店舗も顧客にとっては商品に触れられる場となりますので、オンラインにはないメリットがあります。
よって、この選択肢は×です。
以上から、正解は選択肢アとなります。
尚、企業経営理論には時々、本問のような微妙な選択肢が出題されることがあります。試験テクニック的な話になってしまいますが、そのような場合は問題文の「最も適切なものはどれか」という指示に従って、複数のそれらしい選択肢の中から一番それらしいものを選んでいきます。
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