今日は企業経営理論H26第8問について解説します。
H26 第8問
自動車メーカーや電気・電子機器メーカーなどの大手企業と部品サプライヤーの中小企業との取引関係に関する記述として、最も適切なものはどれか。
ア 自動車メーカーが承認図方式をとるのは、自社技術がカバーしにくい領域の部品であり、第一次系列のサプライヤーに限られるので、中小企業が承認図部品の発注を受けることはない。
イ 自動車メーカーが複数発注をするのは重要な部品が中心であり、月間生産計画がほぼ固定された特定のサプライヤーに渡されて、貸与図による部品生産が行われる。
ウ 中小企業が優良外注先としての評価を高めるためには、通常好業績で高い生産能力をもつことが求められるが、大手企業側からみれば、そのような中小企業との取引を数多くもつことによって、生産全体に柔軟性を持たせることができる。
エ 電気・電子機器メーカーからの注文の契約期間は概して短期間であるが、発注量が安定しており、納入価格も明示されるので、自社の生産計画に合わせやすい。
オ 電気・電子機器メーカーからの発注品目は比較的標準的な部品ながら、持続的な系列取引が求められるので、自社の生産設備を更新する必要はほとんどない。
解説
メーカーとサプライヤーの取引関係に関する問題です。
それでは早速各選択肢を見ていきましょう。
選択肢アの承認図方式とは、製造・設計をサプライヤーが行い、図面の所有権もサプライヤーにあるという方式です。承認図方式をとるのは、自社技術がカバーしにくい領域の部品であるというのはその通りですが、「中小企業が承認図部品の発注を受けることはない」というのは誤りで、優れた技術を持つ中小企業は承認図部品の発注を受けることもあります。
よってこの選択肢は×です。
選択肢イは「自動車メーカーが複数発注をするのは重要な部品が中心」とありますが、複数発注するのは、比較的汎用品に近い部品が中心で、複数のサプライヤーに発注することで、リスク分散を図っています。
よってこの選択肢は×です。
ちなみに、貸与図とは、設計はメーカーが行い、サプライヤーは製造だけを行う方式のことです。
選択肢アで出てきた承認図、貸与図、それからこの問題では出てきませんが関連する委託図は、3つセットで比較しながら覚えておくとよいでしょう。
選択肢ウは、特に誤りの点はなさそうです。
念のため選択肢エ、オも見てみましょう。
選択肢エは、前半の「電気・電子機器メーカーからの注文の契約期間は概して短期間である」という記述は特に問題はありません。しかし「発注量が安定しており」という記述に関しては、そんなことはなく、メーカーの生産量の変化に応じて発注量は変化します。
そのため、この選択肢は×です。
選択肢オは、「比較的標準的な部品」の場合、どこでも作れる部品ということですので、「持続的な系列取引が求められる」可能性は低いと考えられます。
そのため、この選択肢は×です。
以上から正解は選択肢ウとなります。
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